CHAPTER:01

空前の人手不足に、
悲鳴が上がり始める。

 2003年に入社以来、加藤は、経営企画室、海外企画室、物流企画室など、ずっと企画部署に携わってきた。
 現在所属する物流企画室は、安全・品質・納期・コスト・環境の視点で、最適物流を企画することがミッションである。ただ、そのミッションは、そもそもドライバーがいなければ成立しない。そこで加藤が取り組んでいるのが、「ドライバー確保プロジェクト」である。

 トヨタ輸送では、完成車輸送の9割を外部の運送会社に依頼している。そんな協力会社各社から、窮状を訴える声が次々と寄せられるようになった。
「ドライバーを募集しているが、全然集まらない」
「採用してもすぐ辞めてしまう」
 協力会社の安定経営がなければ、トヨタ輸送の責務である完成車輸送の完遂は難しくなる。そうなれば、結果的に元請けであるトヨタ輸送の責任が果たせなくなってしまう。
「なんとか手を打たなければ・・・」
 加藤たちはこうした強い危機感を背景に、ドライバー確保に向けたプロジェクトを推進していくことになった。

CHAPTER:02

最高のドライバーに、最良の環境を。

 プロジェクトを立ち上げるにあたり、各セクションからメンバーが招集された。ただ、初めての試みであり、どんなテーマで取り組めばドライバー不足が解消できるのかも分からない。そこで、まずはメンバーがそれぞれテーマを出し合うところから始まった。
「作業環境を改善しないといけないのでは?」
「採用活動を支援してみてはどうだろう?」
様々な意見が出された結果、26のテーマを掲げて早々に動き出すことになった。本来であれば、ドライバー確保に効果的な対策を見極め、その対策から優先的に取り組むべきだろう。ただ、問題がより一層深刻化すれば、手遅れになる可能性もある。そこで、全方向的に活動をスタートさせることにしたのだ。

 トヨタの車を運ぶ大型トレーラーのドライバーは、牽引免許の取得をはじめ、長大な輸送機器の取り回し、難しい積み降ろし作業、屋外作業など、一般貨物のドライバーにはない厳しい作業環境に順応しなければならない。こうした作業環境の中で、安全かつ高品質輸送という責務を果たすドライバーたちは、「最高のトラックドライバー」といっても過言ではない。
 そんな最高のトラックドライバーに、相応しい待遇や作業環境を提供する。こうした考えの下、プロジェクトメンバーがアイデアを出して決定したのが26のテーマだった。
 ただ、加藤をはじめとしたプロジェクトメンバーは、今まで以上に現場を知り、ドライバーの目線で考える必要があった。「現場での勤務経験がない自分にできるのかという不安が強かった」という。
 そんな中、主に加藤が中心となって取り組むことになるのが、「作業環境の改善」だった。くしくも、現場を熟知しなければ進められないテーマだったのである。


CHAPTER:03

苦労が報われた、ドライバーからの
「ありがとう」。

「そんなの、作業員が倒れてしまう!」
 ドライバーの負担を減らすため、専任作業員を配置し、物流ヤードから積載操作場の近くまで商品車をシフトする企画を現場に提案したところ、厳しい言葉が飛んできた。
「このくらいの台数であれば、問題ないだろう」
 そんな風に考えていた加藤は、現場の状況を見て「これは無理だ」と悟った。
夏場のヤードでの作業は、想像以上に暑い。
「休憩時間をこまめに取らなければ、専任作業者の体力が続かない」と指摘された加藤は、思わず深くうなずいた。
ドライバーの作業負担軽減ばかりに目がいき、専任作業者への配慮が不十分だった。より一層、現場の視点から物事を考える必要があると痛感した。

 以後、加藤をはじめとしたプロジェクトメンバーたちは、現場を理解することに努めた。さらに、ドライバーの作業性/安全性を向上させるため、専任作業者が並べた商品車を積載車の真後ろから積み込む取り組みにおいては、ドライバーへのアンケートを実施した。これにより、ドライバーによっては、真後ろからの積み込みが適していない場合もあるなど、企画段階では見えていなかった課題が把握できた。プロジェクトメンバーと現場のドライバーが互いに意見を出し合うことで、徐々に課題が浮き彫りとなっていった。
 トヨタ自動車殿のご支援をいただきながら進めている積載操作場の有蓋化の取り組みでは、新しいヤードレイアウトを検討する際、現場と一緒に動線を考え、効率性と安全性の両立を図るように努めた。何より現場とのキャッチボールを大切にしながら、様々な試行錯誤を繰り返していった。
 プロジェクトを進めていくと、現場のドライバーから嬉しい反応があった。
「以前に比べるとだいぶ楽になったよ。ありがとう」
 プロジェクトメンバーが中心となり、全社一丸となって取り組んできたこれまでの苦労が報われた瞬間だった。

CHAPTER:04

これからも現場の声を拾い、助けになりたい。

 全社を挙げてさまざまな活動に取り組んだ結果、活動前の2013年と2017年とで比較すると、ドライバーの退職者がグループ全体で年間65名も減少。これにより、目標としていた輸送能力の確保にも一定のメドが立った。
 ただ、プロジェクトはこれで終わったわけではない。少子高齢化が加速するなか、あらゆる業界で労働力不足が叫ばれ、日に日に深刻さを増している。
 また、完成車ドライバーだけでなく、部品ドライバー、部品作業のフォークリフトオペレーター、新車運搬作業員など、さまざまな領域で人手不足が深刻化しつつあるのが実情だ。

「プロジェクトの事務局を務めたことで、相手の立場を考えて調整するようになったし、粘り強さも身に付けることができた」と話す加藤。プロジェクトに関わる中で改めて感じたのは、ドライバーをはじめとする現場で働くすべての人から選ばれる会社であり続けるため、現場の視点に立った全社的な取り組みを継続して行っていくことの大切さ、そして、現場で働く人を大事にすることが、現場で働く人のメリットにも、会社のメリットにもなるということだ。
「働きやすい環境を作ることで、少しでも現場で働く人の助けになりたい」。もっとたくさんの「ありがとう」が聞けるように。加藤は今日も現場と向き合い、より良い職場づくりのために奔走する。

その他エピソード

  • 社員インタビュー

    まずは 現場 を知ることから。
    ドライバーが働きやすい
    職場づくりを目指して。

    車両事業部
    物流企画室 主幹
    加藤 洋平

  • 社員インタビュー

    インドネシアでの合弁会社設立。
    タフな交渉の末に得た
    確かな成長と自信。

    ゼロからの改善推進部
    現場改善室 主任
    安田 辰徳

  • 社員インタビュー

    日本一の取扱台数を誇る
    高岡営業所が取り組んだ
    「ゼロ」へのチャレンジ。

    高岡営業所 所長
    磯村 直樹

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