CHAPTER:01

予想を超える取扱台数と、
限られたマンパワー。

「なるほど。予想以上に大変そうだな・・・」
2017年1月、豊田市の高岡営業所に所長として異動してきた磯村は、現場の状況を見て思わず苦笑いを浮かべた。
 1997年入社。本社近くの土橋営業所で新人時代を過ごし、その後九州営業所へ。本社に異動して以降は、協力会社の管理業務などに携わってきたが、はじめて経験する所長の業務は、想像を超えていた。
「取扱台数がこれだけ多いのに、この人数で回すのか」
 磯村の率直な印象だった。トヨタ自動車の完成車を生産する工場は「出荷地」と呼ばれる。堤工場、元町工場など、数ある出荷地の中でも昨年度、取扱台数が最も多かったのが高岡工場だ。ピーク時には1日約1,800台が生産される。

 それぞれの車には納期がある。1台ごとに何日の何時何分までに出荷するという「出門期限」が定められ、これを遵守するためにいかに業務を効率よく回していくのか。それが高岡営業所のミッションである。ところが、取扱台数に対して、高岡営業所の人員は決して多くはない。所長を含めて8人で安全・品質管理、運行管理、配車管理、顧客対応等を昼夜で行う。業務を円滑に回すためには、所長自らオペレーションを行うことも多い。そんな中で動き出したのが、本社『ゼロからの改善推進部』の“現場でPDCAを回すことができる人材育成”「しくみづくり」「人づくり」の活動だった。

CHAPTER:02

我流で場当たり的。そんな日々を変える。

 『ゼロからの改善推進部』とは、現場で発生した困りごとに対し、これまで一時的な対応に終始していた部分を改善。管理手法の明確化などの「しくみづくり」、業務のマニュアル化や人材育成などの「人づくり」を通じ、現場改善の土台の構築を推進する組織のことだ。2016年1月に新設されたこの組織の働きかけにより、現場が抱える問題の改善に全社的に取り組み始め、高岡営業所でも2017年8月頃から本格的に活動を開始することとなった。

「現場は頑張っているが、どれも我流で進められている」
 改善活動を進めるにあたり、高岡営業所を改めて見渡した磯村はそう感じていた。現場で発生した問題には、きちんと対処している。だが、社員一人ひとりが我流で手を打つ、場当たり的なものが多かったのだ。
 例えば、輸送前の完成車が並ぶヤードでは、スペースがなくなってくると、並べた車を別の場所にもう一度移動させるといった対応が日常的に行われていた。車を何度も移動させれば、その分、事故のリスクが高まり、業務の効率も悪い。こうした場合、きちんとした改善プロセスに則り、現状を把握し、分析に基づいて適切な対策を講じるのが本来のあるべき姿だ。だが、それがなされていなかった。現場に携わる社員たちも、決して問題意識がなかったわけではない。日々の業務に追われ、抜本的な改善策を打てずにいたのだ。

CHAPTER:03

出門期限超過を、限りなく0%へ。

「現場は忙しい。果たして改善活動を根付かせることができるだろうか」
そんな不安を抱きながら改善に取り組み始めた磯村。大切なのは、実際に手を動かす配車係やオペレーションの担当者が、同じ方向性で改善を進めていけるかどうかにあると感じていた。
 だからこそ磯村は、「改善は特別な業務ではない。日常業務の一環なんだ」と社員に説き続けた。また、「どうして改善活動をやらないといけないのか」という目的を理解してもらうことにも腐心した。
 「日常業務もあるのに大変だな」。心の中でそうつぶやいた社員もいたかもしれない。それでも、所長の磯村が率先して活動に取り組むことで、社員たちの間に「所長があれだけ一生懸命にやるなら、自分たちも頑張らなければ」という気持ちが芽生えていく。磯村が率先垂範することで、改善活動は徐々に大きなうねりとなって動き出していった。

 まず朝会の様子が変わり始めた。
「このNGはどんな原因で起こったんですか?」と発言する社員たち。
 出門期限について前日の実績をパソコンで集計。それをホワイトボードに掲示し、昨日の問題点と原因を確認し、社員同士で共有するようになった。
 出門期限を遵守するために、ミスを防ぐための仕組みが設けられている。例えば、出門期限が近づくと車を表示する画面が黄色くなり、残車を管理する画面でも期限が迫っている台数が表示される。ただ、他の業務との兼ね合いもあるため、常に画面を注視しているわけにもいかず、対応遅れ等により出門期限切れが度々起こっていた。見落とし等、オペレーションのミスを減らすためには、いかにチェックを定期的に行い、事前に手を打つかが重要になる。
 毎朝のように原因を確認し、社員への意識付けが浸透した結果、出門期限遵守率は飛躍的に改善した。

CHAPTER:04

毎月100件近くの空車便が、0件に。

 もう一つ、2018年4月から着手したのが積載率の向上、すなわち空車便の削減である。トヨタ輸送では往路・復路ともに積荷を確保することを目指しているが、日々の荷量バランスにより空車になってしまうことがある。2017年には毎月50~100件ほど発生していたが、この無駄な空車便を削減するため、磯村が統括リーダーとなって改善活動に取り組むことになった。
 空車が出る理由を調べていくと、様々な原因が見つかった。なかでも一番の原因は、事業所同士の連携不足にあった。そこで事業所間で共通のルールを定め、これに基づいた運用を行うように業務を改めた。高岡を含めた5つの営業所のメンバーが定期的に集まり、議論を重ねながらルール作りを進めていった。
 改善効果はテキメンだった。改善に着手した4月以降、空車の件数は毎月ゼロで推移している。これにより空車の抑制だけでなく、輸送能力ロスの低減にも繋がった。ただ、改善を図った分、現状では配車係などへの負担が増している部分もある。今後は、現在のアナログ的な手法を見直し、いかにシステム化を図るのかが課題だ。

その他エピソード

  • 社員インタビュー

    まずは 現場 を知ることから。
    ドライバーが働きやすい
    職場づくりを目指して。

    車両事業部
    物流企画室 主幹
    加藤 洋平

  • 社員インタビュー

    インドネシアでの合弁会社設立。
    タフな交渉の末に得た
    確かな成長と自信。

    ゼロからの改善推進部
    現場改善室 主任
    安田 辰徳

  • 社員インタビュー

    日本一の取扱台数を誇る
    高岡営業所が取り組んだ
    「ゼロ」へのチャレンジ。

    高岡営業所 所長
    磯村 直樹

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